『四会連合協定』の契約約款の第30条には、紛争の解決は
①第二者に依頼する、
②建設紛争審査会の斡旋又は調停による、
③審査会が斡旋又は調停をしないときは仲裁合意にもとづいて審査会の仲裁に付するーーとなっています。
この条項には、2つの大きな問題があります。
mこの第二者に力で解決を図る団体や人が介在する危険がある0紛争審査会は非公開であり、知事や建設大臣が審査委員を任命することにも問題があるどうして常識的に「裁判で争う」という文言にしないのでしょう~紛争審査会での解決にどのようなメリットがあるのかを明らかにしてほしいところです。
あるとき東京・蔵前のNさんが、剥がれ落ちた外壁コンクリートを手にして、怒りで体を震わせながら私の研究室を訪ねてきましました。
わけを聞いてみると、まず問題を争っている場所が「紛争審査会」であるとのこと。
最初は裁判所に訴えたけれど、四会連合協定約款を見た裁判所は「この契約書によると裁判所に提訴しないことになっていますから、裁判所では訴状を受理できません」と言ったそうです。
これがNさんの怒りに拍車がかかった第一の原因。
「この世の中に裁判で争えない事件があることなど誰が知っているものですか!」と帰るまで怒りがおさまりませんでしました。
結局、その紛争審査会の調停は不調に終わりましました。
そして、運よく相手側(業者側)の弁護士が同意したので、裁判で争えることになり、ようやく本格的に紛争解決の折衝に入ることができたのです。
この例にみるように、紛争審査会を紛争解決の中心においた契約書の非現実性を指摘しておきたいところです。
ただ、契約前ならこれを是正・訂正してもらうのは意外に簡単。
「紛争の解決」の条項はあなた自身が手を加え、そのように修正するよう要請しましょう。
ある相談者の場合は、本誌の末尾に添付してある「契約約款」をコピーして契約の席に持参、4項目ほどの訂正を提案したところ、相手はすぐに応じてくれたそうです。
さらに「工事中に00建築士による検査を3回行う」との加筆も認められたと喜んでいましました。
四会協定約款の数力所を訂正した私の推奨する契約約款は、なにも消費者寄りに訂正したものではなく、一方だけが義務を負う片務的内容の著しい条項を、両方が平等に義務を負う双務的内容に訂正した程度のもの。
そこを誤解のないよう理解いただき、積極的に活用してほしいものです。
繰り返しますが、争いを解決する方法の条文は「裁判で争う」にすべきです。
ただ、だからといって他の方法を否定するような文言を入れるのは好ましくありません。