請負契約の瑕疵担保について述べましたが、ここでもう一度「瑕疵担保を取り巻く間題と注意点」について少し詳しく解説しておきましょう。
買った住宅(注文も建売も)の保証期間は、古くから民法(第638条)で定められていましました。
しかし、戦後(1951年2月)になって、日本建築学会・日本建築協会・新日本建築家協会・全国建設業協会の4団体が『四会連合協定ーー工事請負契約約款』を作成、それを使った請負契約が始まりましました。
その中の第23条に「瑕疵の担保」の条項があります。
ここには、「担保期限として木造の建物で1年、鉄筋コンクリート造等は2年とする」と明記しています。
しかし、この条項には但し書きがあります。
「ただし、その瑕疵が乙(業者)の故意または重大な過失によって生じた物であるときは1年を5年、2年を10年とする」というのがそれです。
民法でいう5年、10年の「担保期限」は、請負人の責任(故意・過失)によって生じたものであるかどうかにかかわらず発注者の請求権を認めていますが、四会(現在は七会)協定約款では「故意・過失の場合に限り」としていますから、故意であったか過失がなかったかを発注者側が立証しなければ、この本造5年、鉄筋コンクリート造10年という担保期限は適用されないのです。
「民法で定める基準を下回る契約が可能なら、なぜ民法に余計な期限が書いてあるか」と質問をなげかけてきましました。
私は、「私もそう思います」としか答えられなかったのですが、この巧妙なカラクリを知って、学問をする団体であるはずの建築学会が名を連ねて作成した『請負契約約款』が、実は業者の利益を代弁する内容になっていることを理解したことが、その学生の大きな収穫といえば収穫でしょうか。
ところで、大手の建設業者(ゼネコン)は大方この契約約款を使用していますが、住宅会社のほとんどは、会社独自の内容の契約約款を作成しています。
しかし、瑕疵担保期限については、上記の四会連合約款と同様の内容になっているから不思議です。
パソコンでも1年、テレビでも1年の保証期間を業界が設けているのに、何千万円という商品で、しかも、2~3年使ってみないと問題が表面化しない商品特性をもつ建築物の保証期間が1年や2年では、何をかいわんやです。