1984年の3月までの建築基準法は、すべての住宅に確認申請を義務づけていましました。
申請すれば特定行政庁の建築主事が現行法にかなっているかどうかを確認し、問題がなければ通知書がきます。
そして、建築工事が完了してその旨を行政に通知すると、建築主事が検査に出向き、問題がなければ「検査済証」を交付するという段取りになっていましました。
しかし1984年の4月以降、同法に新たに6条の2および7条の2が追加されました。
6条の2は『建築物の確認の特例』そして7条の2は『建築物に関する検査の特例』といいます。
確認の特例が適用される建物は、建築主事ではなく設計した建築士が、プレハブの場合は会社の建築士が、様式住宅(型式認定住宅。
建設大臣が指定した住宅)の場合は建設大臣が確認すればよいということになりましました。
つまり該当する建築物については行政がチェックしないということになったのです。
さらに、完成した建物の検査も行政が行わず、実際に工事の監理をした建築士が大丈夫だと建築主事に通知すれば、行政は自動的に「検査済証」を発行するというわけです。
巷で「どうしてこんなひどい違法建築物が堂々とまかり通るのか」という声をよく耳にします。
その原因は、この制度を利用した悪質業者が申請をゴマかし、違法工事も押し隠して「検査済証」の交付を受けるからなのです。
素人は「役所の確認がおりているのだから」「検査も受けているのだから」と思い込みがちですが、それは全くの錯覚だということを知っておいてください。
確認通知書を見て、15欄に「有」と書かれていたら要注意です。
しかも先頃、行政がこの手続きからさらに手を引き、民間に確認も工事検査も全て任せてしまおうというように法律が改正されました。
行政は全く検査しなくてもよい制度になったということです。
「安心できないなら、間違いが起こる恐れがあると考えるなら、自分の責任で対策を講じなさい」というのが政府のスタンス。
発注者はこれまで以上にリスクを負う可能性が増したということです。
〈契約編〉で詳しく述べますが、だからこそぜひ合計4回は、自分が雇った建築士に自分に代わって点検・検査をしてもらうようにしなければなりません。