建築条件付分譲とは、土地を分譲するときに「契約後3カ月以内に当社と建物の建築請負契約を結ぶこと」を条件にすることをいいます。
この方式のメリットは、買う側にとってはお仕着せの家じゃなく自分の好みを入れた住宅が建てられることにあります。
いわばセミ注文住宅が建てられるというわけです。
一方、分譲する側もこのような購入者のニーズに対応すれば販売促進につながるメリットがあるので、この方式を採用する例が少なからずあります。
以上の建前からすれば、この方式は双方一両得でどこにも問題はありません。
むしろ大いに普及してしかるべき方式で、分譲一戸建て住宅が全部これに置き換わっても不思議はないことになります。
が、そうはならないところに、この方式の問題の種が潜んでいるといってよいでしょう。
すなわち、建築条件付分譲をなぜ業者が採用するかといえば、今述べたユーザーのメリットを前提にしつつも、本音は「土地を売っただけでは儲けが出ない」にあるからです。
この方式では、売り主と買い主が話し合って自由に建物のプランを練るのが建前。
しかし、現実には業者によってあらかじめ、いくつかのプランが設定されているのが普通です。
素人にわかりやすいよう参考資料を示すという意味ではよいのですが、そのプランをほとんど動かすことができないケースがあるのが問題なのです。
参考プランと異なる機器を使おうとすれば「それはオプションです」、間取りを変えようとすれば「それは別途費用です」……という具合にどんどんコストが膨れ上がって、思いもかけない高額物件になってしまうことも。
かといって大幅にコストを切り詰めた建物にしようとすると、業者側が難色を示すので一致点を見いだせないケースも少なくありません。
すなわち業者に儲けが出ないからです。
この儲けについてさらに言えば、土地には相場があるからこのご時世で大幅な利益を見込むのは無理。
一方の建物はコストを切り詰める策があるので、うまくやれば大きい利幅が確保できる、だから建築条件付を採用しようという考え方が底辺にあるわけです。
それではどうして最初から建売住宅にしないかというと、建売りであんまり露骨にコストを切り詰めると貧弱なのがすぎにバレる。
しかし、建築条件付ならそこそこバレにくい……ということなのです。
むろん全部がそうだとは言いません。
良心的な分譲業者のほうが主流です。
しかし、中には露骨に本音商売で押し通す悪質なケースもあるので十分に注意しなければなりません。