昔なら「あの大工が建てた家はいいね」なんていう言葉が交わされたものです。
だいたい、近所の工務店に依頼することが多かったので、誰が建てるのか、腕前も人柄も含めてみんな知っていたんですね。
ところがいまは違います。
大工さんの顔を見てからお金を払う人がどれだけいるでしょうか。
とくに都市部では、ハウスメーカーの営業マンとだけ交渉して契約にいたるケースがほとんど。
「あの営業マンは感じがいいね」とか「あんなに熱心にこられちゃなあ、しょうがない、契約するか」というわけです。
だけど家を建ててくれるのは昔も今も変わらず大工さん、そして基礎工事、内外装、タイル、建具、設備などいろんな業種の職人です。
どんなに営業マンが熱心であっても、彼が家を建てるわけではないのです。
そこを錯覚しないでください。
しかもあなたの家をつくりにやってくる職人さんがそのハウスメーカーの人かといえば、それも違います。
ほとんどの場合、彼らは下請け業者です。
ハウスメーカーには大工さんや左官屋さんなんていないのです(最近では若い職人を育てようとしている会社もありますが、まだほんの一部)。
ですからハウスメーカーが受けた仕事は全部、下請け工務店やその他いろいろな職種にまわっていきます。
元請けがあり、そこから下請け、さらに孫請け、曾孫受けへというのが、いまの住宅業界の仕組みです。
あなたはそのハウスメーカーを信頼して契約をしたのに、実際には顔を知らないどころか、どんな会社から来たのかもわからない人があなたの家をつくりにやってくるのです。
住宅の出来は職人の腕にかかっているといってもいいのに、あなたは実際に工事をする人を選べないようになっているのです。
こうなると家づくりというのは一種の賭のようなもの。
アタリハズレがあるのが当然と考えたほうがよいでしょう。
せめて契約のときまでにどんな下請け業者が工事をするのか教えてもらい、できればその仕事ぶりを見せてもらうようにしたいもの。
工事の中身までわからなくても現場にゴミが散乱しているようなら、仕事が雑な職人とわかります。
施主に話を聞いておくのもいいでしょう。
契約はそれからです。