建物の検査・チェックをするときに最も大事なことの1つは、それを使う人々の命の安全と保健・衛生が脅かされる瑕疵がないかという視点です。
建築基準法に定められている最低限の「技術基準」には、以下のような生命の安全、保健・衛生にかかわる事柄があります。

①建物の床下の地面が、周辺の地面より高くなっているか~
②床下換気孔が、基礎に5m以下の間隔でついていて、大きさは300~以上か~
③小屋裏に換気孔が設けられているか~
④台所と居間などの境に、天丼から下がり壁(50cm以上)が設けられているか~
⑤台所に給気孔が設けられているか~
⑥台所の壁・天丼の材質が不燃材か難燃材になっているか~
⑦トイレの排水管と台所の排水管が独立して設けられているか~
⑧準防火地域の建物では、窓ガラスに鉄網が入っているか~
⑨在来工法の場合、壁に筋違が所定の量以上に入っているか~
⑩基礎が地盤にかなったものになっているか~これらを見落とさずチェックするのが大事なポイントです。
これまで多くの欠陥住宅といわれるモノを見てきて感じるのは、素人が言う欠陥はほとんどが表面的な現象を指しているということ。
ちょっとしたキズや汚れや塗リムラだけに目が行ってしまいがちだということです。
たしかにそれも欠陥・瑕疵なのですが、その瑕疵で財産を失ったり、生命に危険がおよんだり、保健・衛生面で被害を被ったりというケースは少ないのです。
それよりむしろ、もっと根本的なところに目を向けることが大事です。
こんな例があります。
神戸・淡路大震災の前年のこと、Kさんはできあがったわが家に欠陥が目立つので、建てた業者と補修の打合せを年末から続けていましました。
ところが補修工事に着手する前に地震が襲い、建物が半壊(と役所は判定)してしまいましました。
現在、Kさんは業者を相手どって裁判を行っていますが、半壊が構造上の問題であったのかどうかを立証するのは、いまとなってはなかなか難しい問題に……。
地震の前にこの建物がもつ「構造上」「耐火上」の瑕疵を明確にしていたならば、裁判は楽勝だったでしょう。
チェックにも項目と同時に順序があることをこのケースは語っているのです。
まずは命にかかわる重要なポイントからチェックするーーこれを胸に刻み込んでおくことが大事です。