建売り住宅では立ち会いたくても立ち会うチャンスがありませんが、注文住宅の場合は万難を排して立ち会ってほしいのが、この「地縄張り地業」です。
地鎮祭は儀式ですが、地縄張りは儀式ではなく最初の工事です。
建築士が紙に書いた設計図を、本当の敷地の上に「縄を張って」書き込む工事。
住まいづくりで「初めての実感」が得られるのがこの工事です。

①な~んだ、意外に小さいんだね。

②これじゃ軒が隣の敷地に被さらないの~
③雪が降って屋根から落ちたとき、これじゃ隣の敷地に落ちない~
④l階の寝室が、隣りの2階から丸見えだ!などと、紙の上で検討していた段階ではわからなかったことが、現場で地面に設計図を書いてみて、初めてわかるものなのです。
ところが多くの人は、地鎮祭には出ても地縄張りには立ち会いません。
そのあげく「隣家からもう少し境界から建物を離してくれと言われて、こっちに相談もせずに設計図より30cmも引っ込めた。
それで駐車場に車が入らなくなってしまったのです。
専門家だと思って任せていたのに」などという悲劇を招きます。
で、「損害賠償を請求できるのでしょうか」などという相談事になってしまうのです。
素人は、紙に書いたものを広く感じる傾向があります。
また、建物が壁で囲まれた広さを確保するには軒・屋根といった出っ張りが必要なのに、それを計算に入れないことが少なくありません。
帽子を被っているのを忘れて穴に潜って帽子を落とすようなもので、壁面を目いっぱい境界線に近づけさせた結果、屋根が敷地を越境するのが現場で初めてわかることがあります。
こんなときは急遠、軒のない形に変更する羽目になりますが、こんな「泥縄式」では、高い買い物になること必至です。
それでも、着工の前にわかれば何とか問題が解決できるのですが、家が建ちはじめた後でわかったときには、問題が大きくなります。
変更工事に無駄な費用が嵩むばかりか、最初から雨じまいの悪い、いびつな欠陥住宅に仕上がってしまう危険があるのです。