住宅をつくるとき、大工さんには設計図と仕様書が絶対に必要です。
というと、経験の長い大工さんは「そんなことはないのです。
おれの若いときゃ、墨板に竹筆で間取りを書いただけで住宅程度はつくった」と言います。
それはそのとおり。
昔は設計図書も完全ではなかったし、板の上に書かれた基準線だけの図面で家が建ちましました。
しかし、それにはそれなりの理由があったのです。
①現在ほど、多くの材料がなかった、
②天丼の高さなどが、地方単位でほとんど同じだった、
③つくり方がそんなにいろいろなかった、などがその理由です。
だから、建物の値段も「坪○円」という言い方ができたのです。
ところが、施主の好みで天丼高さが変わったり特殊な材料が使われたり、単価の高いものが使われたり、特殊な継ぎ手や組み方が採用されたりという具合に、単に広さだけで建物の工事費が決められない世の中になりましました。
だから、小さい住宅を建てるときでも「設計図書」はぜひ必要なのです。
設計図書の内容は巻末に参考資料として添付してあります、すぐにちょっと開いてみてください。
この表の図書類を見て「あれっ」と首を傾げる人がいそうです。
そう、これは「建築確認申請」のための設計図とも「住宅金融公庫の設計審査」の設計図とも違います。
確認申請や設計審査のために申請書に添付する設計図書は、「住宅を建てるために必要な設計図書」ではありません。
あれは役所がチェックや統計を取るために、公庫が審査や統計を取るために出させているようなもので、そんな設計図書では満足に「小屋」もできません。
きちんと住宅を建てるには、このような設計図書が不可欠なのです。
さてところで、この中の「仕様書」について、多くの人が内容を知らないから不思議です。
実はこれが本格料理に絶対欠かせない、いわば「クッキング・カード」なのです。
綺麗な皿に盛りっけられた料理のできあがり写真は、設計図書の中の「完成見取り図」。
そして、材料表とっくり方を書いた部分がこの「仕様書」。
これがないと、設計した料理を正しく(誰がつくってもおおむね同じに)つくることができません。
ただ、料理のクッキング・カードはわかりやすく書かれていますが、建築の仕様書はだれに読ませようとしているのか、小さい文字でとても見にくく書かれているのが特徴(~)です。
仕様書には、標準的な仕様を書いた「標準仕様書」と、その工事現場だけの特殊なことが書かれた「特記仕様書」の2つがあります。
建築中に出た上をどのように処理するかなどについて書いたものは特記仕様書です。
このように図面に書けない事柄を文字で書いたものが仕様書ですから、工事の内容を知る上で不可欠の書類。
十分に目を通して、疑間はすべて解消しておかなければなりません。