「建築士に設計してもらったんですが、代金は業者から見積りを取らないとわからないと言うんです。これでは業者の言いなりではないですか」。
建築士が自分で設計した住宅の標準的な工事費すら言ってくれない、と不満をぶっける人がいます。
建築士に設計を依頼する、あるいは工事監理を依頼するときは、必ず「設計契約」か「工事監理契約」を結びます。
そして、設計契約を結ぶ場合には、建築士にどんな仕事をしてもらうのか、その業務の内容を契約書に書くことになっています。
一般的には、設計契約をすれば建築士が設計した建物の「標準工事費」を算定することが業務内容として書いてあります。
なぜ建築士にそれを求めるかといえば、予算に合わせて設計してもらいたいからで、だいたいの予算を建築士に伝えて設計してもらうのが普通だからです。
したがって、そういう内容が盛り込まれていない契約はだめ。
盛り込むのを認めようとしない建築士とは、きっぱり手を切るのが得策というものです。
契約は建築士が設計図書を完成させた段階で、当然ながら施主は建築士に設計した住宅の標準的な工事費を試算してもらい、その標準工事費が予算の範囲内にあることを確かめた上で、工務店(施工業者)数社に相見積りの提出を求めるという段取りになります。
ところが、建築士といってもデザインが主な仕事で、工事監理にも精通せず、工事費には全く素人並みという建築士が少なくないから要注意なのです。
それならまだいい方で、自分が設計した設計図をひそかに知り合いの施工業者に渡し、施主の予算を教えて「相見積り」を出させ、業者に有利な工事費をでっち上げる建築士すらいます。
建築士に標準工事費を出してもらい、予算よりも試算が上回っていれば、それを予算内に納まるように補正していくのが設計打合せ。
この打合せの内容を業者に漏らさないのは建築士の最低のモラルです。
もし特定の業者にこの情報が漏れると、正しい「競争入札」が成り立ちません。
高値の方に工事費がつり上げられる可能性すらあります。
建築士を選び、設計・監理を依頼することは、信頼関係を前提にした非常に重要な契約なのです。
もちろん建売り住宅には施主側に立つ建築士などついていないし、注文建築ですら、施工業者が勝手に決めた施主の知らない建築士というケースがほとんど。
そんな人の名前が書面に書かれていても、あなたとまったく面識のない建築士ですから安心などできないのです。
住宅は自分の予算に合わせて設計が行われているかどうかの打合せが不可欠。
打合せが不十分なままに契約し着工してしまうと、間違いなく予想を超える「追加工事代金」を請求されることになるでしょう。
これをないがしろにする建築士(業者)だなと感づいたら、さっさと他のところに代えましょう。