だが…マンションは隣家、上下階が壁で接しているので、他住戸の音を完全に遮ることはできません。
生活に支障のない範囲で音が漏れるのはやむを得ないこととしなければなりませんが、常識を超える音量で漏れてくるのは問題です。
この原因には、
①壁・床スラブが薄すぎる、
②床の仕上げが雑、
③天丼が二重になっていない、などが挙げられます。
壁は厚さ16~18cm以上のコンクリートにモルタルを塗って仕上げ材を。
床は18~20cmのコンクリートに発泡モルタルを重ね、下地材を入れて仕上げ材をーーというのが丁寧な設計といえます。
しかし現実には壁は14~15cmどまり、床も15cm程度でしかも発泡材を省略というケースが少なくないのです。
遮音性能がガクンと落ちるのは明白です。
最近、床の仕上げをフローリングにするマンションが増えましました。
しかし、フローリングの遮音は技術的に完成されているとはいえず、どうしてもカーペットより音が響いてしまいます。
また、天丼もコストダウンのために一重(直天丼)のものが少なくなく、中には天丼を高く見せるために一重という例もあります。
このように、遮音性能の悪いマンションが現実にあるのですが、しかし、欠陥かどうかとなるとなかなか難しい問題です。
『建築基準法施行令』では「共同住宅の界壁は厚さ10cm以上とし」とありますから、15cmもあれば問題ないと業者は主張するでしょう。
床も構造設計上の基準を満たしていればいいので、これも満たしているかぎり欠陥ではないと業者は主張します。
やはり音も購入前に慎重にチェックすべきなのですが、後戻りできない今、どうすればいいか~ーーまずは専門家に依頼して、騒音の調査をして原因をつきとめてもらいます。
もし構造的な問題であるならば他の住戸も同じ悩みをかかえているはずなので、住民全体で分譲業者に改善を申し入れます。
構造に手を入れるのは不可能でも、壁や天丼に遮音材を貼るなどの歩寄りを勝ち取ることは不可能ではありません。
一方、もしあなたの住戸だけの問題であるとすれば、上階の床や左右の界壁など限られた範囲の施工不良の可能性があります。
このときは瑕疵として改善を要求しましょう。
なお、上階がフローリングに貼り替えたのが原因といった、特定の隣家の問題である場合もあります。
これは当事者と話し合って円満に解決を図る以外に手はありません。