こんなすごい実例があります。
大きな借金をして建てていた自宅併用マンションの工事中、おかしなところを発見した発注者が工事業者に、工事中止を求めて内容をチェックした結果、つぎつぎに瑕疵が発見されましました。
話し合いではどうにも問題のケリがつかず、裁判にもち込んで争っていましたが、長引くうちにバブルが弾け、発注者の奥様が亡くなり、ついに敷地を売って借金を返済し、自分は新しい住まいに1日も住むことなく撤退せぎるを得なかったというものです。
施主がコンクリートの外壁に傾きを発見、専門家にチェックしてもらった結果「大いに心配である」との判定。
それが発注者に徹底交戦を決意させたのですが、ほどほどに補修させて入居してしまっていれば、ここまで悲惨な結果にならなかったのではないかーと、やや複雑な思いにかられる事例の1つです。
ことほど左様に、建築にまつわるトラブルは複雑で、円満にコトを収めるにはプロでも難しいということを知っていただくために紹介してみましました。
それはさておいて、発注者であれ依頼された専門家であれ、おかしな個所を発見したら、
①まず証拠を固めて、
②書面に仕上げ、
③工事の請負契約者に対し、
④所定の期間を設けて、
⑤書面による回答を求める、のが基本です。
書面による回答が施主に届いた段階で専門家と施主が相談して、請負工事業者の回答が妥当なものであるかを検討します。
検討の結果、妥当なものなら、補修で和解して補修工事を指示するし、回答の内容が納得できないものならば、改めて突っ込んだ話し合いをもちます。
いずれにしても発注者が素人ならば専門家に立ち会ってもらうべきです。
建築士と、弁護士にも一緒に立ち会ってもらうのがベストでしょう。
ただ、ここで勘違いしては困るのが、おかしな個所を発見したからといって、工事をしている人(職人)に直接「床を張り替えてください。
あんなズサンな仕上がりはありませんよ」などと指示しないことです。
工事の出来・不出来は、工事を請け負った者に言うべきこと。
しかも回頭ではなく、書面で言うべきものなのです。
はっきり言って口頭での指示・クレームの処理要求は証拠になりません。
書面で要求し、回答も書面でもらってください。
回答書がきたら、専門家と相談して、これからの戦術を練るのです。
また、簡単に「建て替えさせられる」とは考えないで欲しいものです。
原則として、瑕疵のある物件でも「契約解除や建て直しはできない」と民法は定めています。
したがって、上手に補修させ、それでも足りない場合は金銭賠償を併用する、というのが常識的な戦い方だと思います。
実際に建て直したものも数件あるにはありますが、裁判で建て替えの判決を得るのは至難の業。
レアケースであることを肝に命じて、そんな羽目に陥らないよう完璧な契約と万全なチェック体制にエネルギーを注ぐようにしたいものです。