契約にあたって印鑑を押す際に、とくに注意したいことが2点あります。
まず第1点は、「白紙委任状には絶対に印鑑を押さないこと」です。
白紙委任状とは、何も書いていない用紙にあなたの印鑑だけを押したもの。
あるいは委任状とだけ印刷してあって用途が何も書いていない用紙に印鑑を押すのも白紙委任状です。
中には「手続きは一切こちらで代行しますから、こことここにハンコを押してください」などと言う業者がいます。
もちろん全部がだましを狙ったものではありませんが、これが悪徳業者の初歩的なだましのテクニックの1つ。
これに「印鑑証明を何通か用意しておいてください」などと言われて乗ってしまったら、最悪の事態を招くことがあります。
サギ行為の導入部で使われる手口だということを知っておくべきです。
この自紙委任状がどう使われるか、例を引いてみましょう。
Aさんが土地を売ろうとしています。
Aさんに近づいた業者Zは、「事前の手続きをするので委任状をください」と自紙委任状を預かったとします。
そこへ購入希望のBさんが登場。
業者Zは預かった委任状を使って勝手に代理人に化けてBさんと契約、そしてドロンです。
典型的なサギなので、取得時効(10年)にかかる前にAさんが事態を知れば、そんな契約は無効。
もちろんBさんは所有権移転登記もできず支払ったお金はパーということに。
物件を買おうとする場合にも白紙委任状はとても危険です。
勝手に金利の高いローンを組まれたり、買うはずのものではない住戸に移し換えられたりすることもなくはありません。
第2点は、「契約書にむやみに捨て印を押さないこと」です。
捨て印は、内容の訂正や字句の訂正があったときに、書類を送ったり送り返したりする面倒がないように押させるケースがありますが、悪意をもってやれば内容を業者の都合のいいように書き換えることができます。
極端な場合は金額だって書換えが可能ですから、意味のないところヘは印鑑を押さないようにしましょう。
契約書で印鑑を押すべきところは、署名の上の捺印複数枚の契約書が一対のものであることを示すための割印だけだと心得ておくべきです。